tadashiro’s blog

しろのブログ

落語、北海道、野鳥など。

落語

『浜野矩随(はまののりゆき)』の若狭屋について(柳家さん喬の場合)

『浜野矩随』という噺に登場する若狭屋は、演者によってずいぶん雰囲気が違って感じられる。 例えば、矩随を援助する理由についても差異があるのだが、意図的であったにしろ、なかったにしろ、パトロンの役割を果たしたという点については共通していると言っ…

ラジオをつけたら『浜野矩随』をやっていて

先日、車に乗っているとき、「この時間は『真打ち競演』をやっているかも」と思ってラジオをつけてみました。*1 どうやら『浜野矩随(はまののりゆき)』のようです。 途中からですが、すごく上手いので聴き入ってしまいます。 誰なんだろう。 柳家さん喬に…

『明烏』の4つの「遊び」

『明烏』を聴いていたら、4種類の「遊び」が描かれていることに気付いた、というそれだけの話だが、よろしければ、しばしお付き合い願いたい。*1 ※ 『明烏』の 要約 。 『明烏』の4つの「遊び」 子どもの「遊び」 参詣の「遊び」 酒を飲む「遊び」 吉原の…

カーオーディオのUSBで落語を聴いてみた

最近、USB が使えるカーオーディオを使い始めました。 USB っていうのは "Universal Serial Bus" の略で *1 、情報機器に周辺機器を接続するための規格の1つだから、記憶装置については「USBメモリ」とか「USBフラッシュメモリ」とか言うべきなんだろうけど…

『五人廻し』の喜瀬川を落とすには

「遊女が二人以上の客に順次に接すること」を「廻し」と言うらしい。*1 一晩に5人の「廻し」をとる『五人廻し』では、4人もの客が待ちぼうけを食わされることになるわけだが、彼らの言動を反面教師とすれば、吉原で粋に遊ぶためのヒントになるはずだ。 今…

お気に入りを待つ気持ち

NHKの「日本の話芸」で柳家さん喬の『天狗裁き』が放送された。 お気に入りの噺で、以前から何度も繰り返しCDで聴いていたのだけど、今回、映像として観ることができたので、とても嬉しい。*1 地方に住んでいると、簡単に寄席には行けないし、落語会な…

『あくび指南』は「落語指南」かもしれない

「NHK新人落語大賞」を観ていたら、柳亭市弥が「あくび指南」をやっていて、審査員から「難しい噺に挑戦した」と評価されていた。 どういう難しさがあるんだろう・・・とちょっと考えてみたので、書いてみたい。 べつに落語家を目指しているわけでもない…

家主は儲からない?(『水屋の富』を聴いて)

『水屋の富』を聴いていて、ちょっと疑問に思っていたことがありました。*1 富くじで得た八百両を失うことを恐れ、疑心暗鬼に陥る水屋の清兵衛さん。 そこへ長屋の住人が訪ねてきて、ある頼み事をします。 聞けば、家主が多額の借金を背負い、長屋が抵当に入…

『水屋の富』の失敗を分析する

今年もサマージャンボ宝くじが外れたようなので、『水屋の富』を聴いてみた。*1 この噺、「分不相応な富を得ても、新たな悩みの種になるだけだよね」という風に慰めるのにはいいのだが、もしも次に買う宝くじが当たった時に、水屋の清兵衛さんと同じ運命を辿…

『長短』と「短短」と「長長」

『猫の皿』についていくつか記事を書いたのだけど、今回は2枚組CDのもう1枚について書いてみたい。 そのもう1枚の噺は『長短』。*1 しかしこの噺、「えほん寄席 *2 」で5分にまとめても違和感が無いくらい短い噺なのに、それだけで1枚のCDになるか…

『百川』の羽織について

『百川』という噺でずっと気になっていたことがありました。 百兵衛が着ている羽織がどのような役割を果たしたのかということです。 ※ 『百川』のあらすじを確認したい方は ここをクリック してください。 【この記事の目次】 『百川』の羽織について 羽織と…

『猫の皿』に登場する猫の行く末を考えてみた

『猫の皿』という噺に登場する猫のその後について考えてみた。 落語ファンはあまりネタバレを気にしない人が多いと思うが、念のため注意喚起しておこう。 以下、ネタバレしているのでご注意を。 【この記事の目次】 『猫の皿』に登場する猫の行く末を考えて…

『猫の皿』の贅沢さ

いきなりですけど、『猫の皿』の皿の使い方って、とても贅沢だと思いません? 「江戸へ持って行けば、黙って三百両、うまくすれば五百両、千両」というほどの高級な名品ですよ。*1 それを猫の餌皿に使うなんて・・・って思ってしまうんですよね。 とか言いな…

『猫の皿』の罠は意図的か

引き続き『猫の皿』について。*1 今回は茶店の主人について考えてみたい。 【この記事の目次】 『猫の皿』の罠は意図的か (1)仕組まれた罠 「猫の皿」を使う時 主人の目的 (2)少なくとも最初は (3)「なぜか」三両で売れる 相違点 メリット (4)「…

『猫の皿』の買い手はどこで誤ったか

『猫の皿』という噺が好きで、録画してある「えほん寄席」を時々観ていたのだが、柳家小三治のCDを見つけたので購入してみた。*1 枕がなんと39分21秒もある。 小三治の枕を期待している人なら満足だろうけど、飛ばしちゃう人もいるかもしれないなぁ・…

大八車って危ないの?(『鴻池の犬』を聴いて)

『鴻池の犬』に「犬が大八車に轢かれてしまう」という悲しい場面が登場します。*1 ja.wikipedia.org 大八車ってなんかのんびりした印象なので、犬が轢かれるなんていうことがあるのかなぁ・・・というわけで、少し調べてみました。 大八車って危ないの?(『…

『鴻池の犬』の小僧と「すっぱい葡萄」

『鴻池の犬』という噺は、小僧が3匹の捨て犬を拾うところから物語が始まる。 当初、主人は飼うことを許さないが、引き取り手が現れたらすぐに譲り渡すという条件で認められることになり、小僧は喜んで世話をする。 しかし、そのうちの1匹が実際に貰われて…

『鴻池の犬』に犬がひと言物申す

我が輩は犬である。名前は・・・まぁ、それはいいとして、先日、我が輩の飼い主が『鴻池の犬』なる落語を聴いて愉しんでいたのであるが *1 、犬である我が輩としては若干気になるところがあり、ひと言物申すべく、飼い主の目を盗んでキーボードを叩いている次第…

『百川』の焼酎と卵は何のため?

『百川』で以前から気になっていたことがあります。 百兵衛さんが鴨池先生から用意するようにと言付かる「焼酎を一升、白布を五、六反、鶏卵を二十ばかり」というもの。*1 焼酎と白布の使い途は分かるのですが、卵ってどう使うのかな? というわけで、ちょっ…

『花見酒』の経済

Amazonプライムで三遊亭小円馬の『花見酒』が無料になっていたので、聴いてみました。*1 【この記事の目次】 『花見酒』の経済 笠信太郎の『“花見酒”の経済』 石橋湛山の「花見酒の経済」 それを言っちゃぁ・・・ まとめ 『花見酒』の経済 『花見酒』は、花見客…

『花見の仇討』の失敗から学ぶ

『花見の仇討』は、花見客を驚かそうと企画した茶番がグダグダになってしまう様子を楽しむ噺なのだが、企画立案した主人公の立場になってみると、可哀想な話でもある。 そこで、彼らの翌年の趣向が成功するように、あえて失敗の原因を探ってみようと思う。 …

「落語ディーパー!」は『花見の仇討』でしたね

「落語ディーパー!」は『花見の仇討』でしたね 先日録画しておいた「落語ディーパー!」を見ました。 今回のテーマは『花見の仇討』でしたね。 名演として番組で取り上げられたものの中に、柳亭市馬のものがありましたが、あれは「日本の話芸」で放送された…

『天狗裁き』は無限ループか

世間に漂う閉塞感から逃れるために、久々に柳家さん喬の『天狗裁き』を聴いた。*1 現実離れした馬鹿馬鹿しい物語にしばし逃避した後、この噺について以前から気になっていたことを考えてみた。 落語について考えている間は他のことを考えなくて済むので、こ…

『抜け雀』を投資の観点から考える

なんとなく『抜け雀』を聴いているうちに、お金のことが気になってしまった。 毎週、「突撃!カネオくん」を見ているから「お金に興味津々」になってしまったのだろうか。*1 それはさておき、『抜け雀』の宿屋の主人が絵を保有し続けたことは、結果的に正解…

『試し酒』とは誰が何を試す酒なのか

うちは夫婦2人とも酒を飲まない。というか、体質的に飲めない。 でも、酒の噺はけっこう好きだ。 柳亭市馬のDVD *1 に添えられた文章の中で、長井好弘は「酒が飲めない噺家は、どんな了見で酒の噺を演じるのか」と問いかけ、柳亭市馬の「こうなれたらい…

『井戸の茶碗』の「細川様」の描写について

以前、『井戸の茶碗』についての記事を書いていた時に、続けて書こうと思っていたのだけど、年末年始になったり、東出ブームが起こったりして、タイミングを逸していたことを書いておこうと思う。 この噺の後半、「細川」という殿様が出てくるのだけど、その…

『鼠穴』の兄弟を経営という観点から考察してみる

昨今の東出ブームに乗っかって、昨年末に再放送された「落語ディーパー」で取り上げられていた『鼠穴』について書いてみようと思う。 あらすじをまとめるのは大変そうだし、ネタバレに気を遣わないといけない噺でもあるので、取り敢えずあらすじは書かずに、…

映画『吉原炎上』と廓噺

廓噺を聴く度に夫が映画『吉原炎上 *1 』の話をするので、妻も気になっていたところ、アマゾンのプライム・ビデオで会員特典対象になっていたので、正月休みに視聴してみた。(正月に夫婦で観るような映画か?) 確かに印象に残る映画だね。 そして、廓噺の…

『ねずみ』で飯田丹下が彫った虎について考えてみた

ねずみ年になったので、久々に柳家さん喬の『ねずみ』を聴いてみた。*1 虎の彫り物のくだりを聴く度に、この噺とは恐らく関係が無いだろうと思いながらも、どうしても思い浮かんでしまうことがあって、今回はそれを書いてみようと思う。 ※ サゲ(落ち)につ…

なんで江戸の借金取りが関西弁なの?(柳家さん喬の『掛取万歳』を聴いて)

年末ということで、柳家さん喬の『掛取万歳 *1 』を聴いていたら、妻が「なんで江戸の借金取りが関西弁なの?」という素朴な疑問を抱いたので、それに答えるべく、夫が少し調べてみた。 年が明けるまであと数時間。今年中に書き上げられるか。(『掛取万歳』…

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