tadashiro’s blog

しろのブログ

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ドラマの北海道弁に違和感を持ってはいけないという風潮に対する違和感と、ついでに「そだね〜」

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なつぞら 北海道弁」で検索をしてこのブログにたどり着いてくださる方が多数いらっしゃるようで、ありがたい限りでございます。*1

そこで、ふと、自分でも検索してみましたら、「『なつぞら』の北海道弁が気になる」という意見と「『なつぞら』の北海道弁は気にならない」という意見の2つに大別されるようですね。(当たり前だ)

我々は「気になってしまう派」なのですが、「正しい北海道弁じゃないからけしからん!」という程の極右ではなく、中道右派って感じですかね。普通にドラマを楽しんでいて、「北海道弁が気にならなければ、もっと楽しめるのになぁ」というのが我々のスタンスです。

でも、「気になる派」の多くを占めるのは道民で、「気にならない派」の多くは道外出身者であろうという予想が成り立ちますから、多数派の圧力を勝手に感じてしまうんですよね。まぁ、だいたいは中道左派って感じで、圧力をかけているつもりはないんでしょうけど。

特に、「気にならない」ならまだしも、「気にするのはおかしい」とか「気にしてはいけない」という論調には違和感があって、ひとこと申し上げたくなってしまうのです。「気にするなって言われても、気になってしまうものはしょうがないじゃないですか」って。

そこで、「なつぞら」に限らず、北海道を舞台にしたドラマ一般で使用される北海道弁についての意見として、少し(のつもりだったのですが・・・)書いてみます。*2 

【この記事の目次】

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ドラマで使用される北海道弁に違和感を持ってはいけませんか?

「気にしてはいけない派」の意見をまとめると、以下のような感じでしょうか。

  1. 北海道は広大であり、方言にも地域差がある。「正しい北海道弁」というような規範的な北海道弁は存在しない。
  2. ドラマで使用される方言は、実際に使用されているものである必要はなく、それらしい雰囲気を演出できれば良い。
  3. どの地域においても、ドラマで使用される方言に違和感を覚える人は必ず存在するものであり、北海道だけが特別なわけではない。

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「気になってしまう派」からの意見

これらについての我々の意見を書いてみます。

まずは1について

北海道はでっかいどうなので、方言に地域差があるのは承知しています。「規範的な北海道弁」というものを定められないのも恐らく事実でしょう。しかし、そうは言っても、北海道の大部分の地域に共通する音声的な特徴は存在すると思っています。

ちなみに、我が家の母語は、夫が北海道弁ネイティブ(浜言葉)で、妻が東京弁ネイティブ。2人とも札幌に在住したことがあり、当時は道内各地からの出身者や道外出身者との交流がありました。

また、現在所属するコミュニティについて簡単に紹介すると、

  • 基幹産業は酪農。
  • ベッドタウンとしての性格を持ち、都市部に通勤する人も多い。
  • 年齢層は子どもからお年寄りまで様々。
  • 出身地域の構成は、多くが地元周辺の出身者で、それより少ない道内他地域出身者、少数の道外出身者で構成されている。

という感じです。絶対数は多くありませんが、サンプルとしては悪くないと思います。

このような環境下にあって、我が家では東京方言と北海道方言との違いや、北海道弁の地域差について、これまでも頻繁に話題に上り、議論を重ねてきました。そして、現在の結論としては、やはり「北海道弁らしさ」は存在すると考えています。

日本語にも多数の方言がありますが、日本語ネイティブにとっては、日本語らしい発音であるかどうかは感覚的に判断できるはずです。同様に、北海道弁ネイティブにとっては、北海道弁らしいかどうかは、感覚的に判断できると考えても差し支えないのではないでしょうか。

続いて2について

「北海道らしさが出ていればいいんじゃない?」という意見については、確かにその通りだと思います。問題はその「らしさ」を表現できているかどうかでしょう。これは、各個人の感覚の違いになるので、簡単に線を引けるものではありません。

ですが、違和感を覚えてしまう人が一定数いるとすれば、「らしさ」を表現できていない可能性があるのではないでしょうか。

昔の(今もかも)ハリウッド映画に日本語が登場するとき、かなりいい加減な日本語で、「違和感ありまくりだろ」ってことがありませんでしたか?

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古い映画ですが、「メジャーリーグ」という映画で、グランドキーパーらしき2人が日本語(らしき言語)で会話していたシーンがあったと記憶しています。恐らく日系人という設定かと思うのですが、筆者にとっては最初は日本語に聞こえず、何度も再生し直して、ようやく日本語らしいと気付いた経験があります。*3

「大多数のアメリカ人にとっては、日本語らしい雰囲気が出ていても、日本語ネイティブにとっては、とてもネイティブには聞こえない発音」というものが存在すると思います。

メジャーリーグ」の場合、アメリカが舞台であり、物語の本筋に影響を与えるほどのシーンではありませんが、日本を舞台にした映画で、出演者の多くが外国語訛りの日本語を話していたら、日本語ネイティブの観客はどう感じるでしょうか。

また、もしも、丸の内のオフィスを舞台にしたドラマで、訛りの強い人が大勢働いていたら、違和感を持たずに視聴できると断言できるでしょうか。

「北海道によく似たどこか」であるならまだしも、「北海道のどこか」が舞台であることを明言していながら、北海道弁を(ある程度でも)表現できていないとすれば、改善の余地があると言えないでしょうか。

最後に3について

私たちが気付かないだけで、地方を舞台にしたドラマでは同様のことがよく起きているのでしょう。

でも、だからと言って、その地方の人の自然な感覚を封殺してよいとは思いません。その意見に耳を傾け、「可能な限り」対処するべきではないかと思います。*4

北海道弁の場合は、「完璧に真似るのは案外難しいが、それっぽくするのは比較的容易である」というのが我々の意見です。これについては、過去の記事(内部リンク)で書きましたので、そちらをご参照いただきたいのですが、ひと言でまとめると、「文末の数音節の発音にフォーカスする」だけで、かなり「それっぽく」できると考えています。

 

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おまけ。「なつぞら」の「そだね〜」。

流行語にまでなってしまった「そだね〜」は、今や北海道弁の象徴になってしまったのか、類する表現も含めると、かなり多用されているように思う。

で、それらが北海道弁らしく聞こえない。

単純に東京方言の「そうだね」の第1音節を短くすればよいと勘違いしているのか、北海道弁のイントネーションを勘違いしているのか、あるいは、その両方なのかは分からないが、耳に付いてしまって仕方がない。

特に「そね〜*5 という発音が違和感が大きい。

たぶん、カーリングの選手達は「ね〜」か「だね〜」のように発音していたんじゃないかな。

また、文脈によっては「ねぇえ」のような波を作る場合もあるように思う。*6

そして、「」の部分がかなり高い音程で発音され、東京方言に比べて、全体の高低差がとても大きいと思う。

ねぇえ?

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おまけのおまけ(ブログ内検索)

 

 

*1:「他の記事に比べると多い」というだけで、数としてはそんなに多くはない。

*2:「反論」っていうほどの大げさなものとして捉えられると恐いなぁ。炎上したらどうしよう・・・。しないか。それほどのアクセス数がないもんね。

*3:記憶に基づいて書いているので、誤りがあったら申し訳ありません。

*4:ここで強調したいのは「可能な限り」であって、「100%要求に応えろ!」と言うつもりはありません。

*5:大きさは音程の高低を表す。大きいほど高い。以下同様。

*6:この場合の最後の部分は中国語の四声における第3声のような印象。参考:「中国語の四声(声調)とピンインや発音の簡単練習方法 - 中国語を学ぶろぐ」(外部リンク)

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