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落語100字要約裏話

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検索で「100字要約」というカテゴリーに来てくださる方が増えてきたので、「裏話」を少々。

ちなみに「表」の記事は こちら です。

【この記事の目次】

落語100字要約裏話

きっかけは「ドラゴン桜2」

始めたきっかけは「ドラゴン桜2」という東京大学の合格を目指す漫画です。

大受験には要約する力が必要だ! ということで、「走れメロス」を100字以内で要約する課題に主人公たちが取り組むことになるのですが、ふと「落語でやったら面白いかな」と思って作り始めました。

そのため、当初は「以下の噺をそれぞれ100字程度で要約しなさい」という問題に対する「解答例」という体裁を取っていましたが、「落語 あらすじ」のようなキーワードで検索して来てくださる方が多いようですし、噺の数もある程度そろってきたので、余計な記述を削除して、普通の「あらすじ集」にしました。

100字の難しさ

何の気なしに始めた企画でしたが、100字という制約はすごく難しいということが実際にやってみて分かりました。確かに東大受験にも役立ちそうです。

物語の本質はどこにあるのかを分析し、入れるべきところ、省いてもいいところを検討します。字数を調整する・・・というより、大抵は削るためですが、同じ内容を様々な表現で記述してみて、良さそうなものを選んでいきます。また、類語に置き換えることで字数を削ることも多く、語彙の豊富さも求められます。

落語特有の難しさ

落語には特有の難しさもあります。100字以内ではあまりにも厳しいので、100字程度としました。(細かく言うと、91字以上、109字以内としています。)

落ち(サゲ)の問題

その特有の難しさというものを紹介しますと、まず、困ったのは落ち(サゲ)の問題です。落語の場合は、落ち(サゲ)が重要なようで、さほど重要ではないものが結構あります。でも、重要ではないからといって省いてしまうと、落語らしさは損なわれますし、まとまりのない話になってしまいます。多少強引でも入れるしかないということがあります。

その分、他の部分で字数を削るしかなくなります。面白くて気に入っている部分でも、物語の本質に関係なければ、省かざるを得ないことがあり、どの噺でも大抵は苦渋の決断を迫られます。

「繰り返し」の問題

最も苦労するのは、「繰り返し」です。似たような言葉やシチュエーションを繰り返すことで面白さが増していく噺が多いのですが、字数の制約があるため、すべてを入れるわけにはいきません。泣く泣くひと言にまとめてしまうこともあります。

固有名詞の問題

他に気を付けているのは、固有名詞をできるだけ使わないことです。可能な限り普遍性を確保したいのが、その理由のひとつです。

落語に使われる固有名詞は、ほとんどが記号化されており、その知識を有する読者を前提とすれば、非常に便利なものです。

しかし、前述の通り、最初は「入試問題への解答例」という体裁だったので、使用を控える必要がありました。

また、固有名詞は演者によって変更される場合があります。例えば、小僧(丁稚)と言えば「定吉」ですが、「長吉」と変更されたものを聞いたことがあります。(これは恐らく、「定吉」が登場する噺を先に演じた人がいたために、客の混乱を避けるための配慮をしたのだと思われます。)

これらの理由から、固有名詞の使用を避けているのですが、「元犬」のように名前が落ち(サゲ)として使われている場合などは、そのまま使用します。(サゲを変更して演じる落語家もいるので、悩ましいところですが。)

一番の収穫

上記のような落語の特徴を見出せたことが、この企画を通して得ることができた一番の収穫だと思います。物語の本筋だけでなく、本筋とは関係のない部分にも落語的な面白さがあるということに気付くきっかけとなりました。

体言止めの多用

当初の企画である「要約問題に対する解答例」という点では、体言止めは向かないのではないかと思うのですが、字数制限をクリアするためにどうしても多くなってしまいます。要約問題で体言止めって使ってもいいものなんでしょうかね。

参考とする資料

あらすじを作成する噺は、当ブログで触れたものを中心にしています。そのため、準拠する音源は自然とCDとして所有しているものになり、その多くは柳家さん喬のものです。

ネットの利用

しかしながら、他の落語家との差異を確認したりする必要があるときには、YouTube を利用することもあります。

また、漢字を特定したり、細かなところを確認するために、Wikipedia や他のあらすじ集を参考にする場合もあります。主に参考にさせていただいているのは、「千字寄席 *1 」さんと「落語散歩 *2 」さんです。

「千字寄席」さんは「千字」、うちは「100字」ということで、もしかしたら対抗しているのではないかと思われるかも知れませんが、前述の通り、きっかけは「ドラゴン桜2」という漫画なので、特にそういうことはありません。そもそも、あの圧倒的な情報量の豊富さには適いそうもありませんから、リスペクトはあっても対抗心などは起こりませんよ。

いつかは作品の募集を

いつかは、コメント欄を設けて作品を募集してみたいという気持ちがあるのですが、好きな噺は自分で作りたいので、まだ先の話になりそうです。(CDのストックがまだたくさんあるんですよね。)

早くできるようにがんばろうっと。

ところで、こんな記事を最後まで読んでくださる方がいらっしゃるんでしょうかね。もしかしたら、少しはいらっしゃるかも知れないので、お礼を述べておきますね。

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

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