今日、犬の散歩をしていたら、ご近所さんが木々の間から現れて、「カブトムシを逃がしに来てやったんだわ」と自慢気に・・・。
どうやら、自宅敷地に迷い込んだカブトムシを放してやるために、林の中へ入っていたらしい。
それを聞いて、思わず口をついて出てしまったのが「カブトムシは外来種なんで、本当は殺した方がいいんですけどね・・・」という言葉。
しまった! と思って、フォローしようと繋いだ言葉が「でも、越冬しちゃってるんでしょうかね・・・」って、これ、フォローになってるか?
ああぁ・・・どうしよう・・・とか思っていたら、ご近所さんが「向こうの堆肥場に行くと、けっこうたくさんいるんだわ(笑)」って・・・フォローになったのか? いや、しかし・・・
などと考えているうちに、ご近所さんはにこやかに去っていってしまった。
うーん。何だこのモヤモヤは・・・。
自分の信念としては、近所で見つけたカブトムシは、心を鬼にして殺すようにしている。
カブトムシは元々北海道には棲息していなかった外来種で、在来のクワガタムシを脅かす存在だからだ。*1
しかし、だからと言って、ご近所さんに「殺せ」と言う権利が自分にはあるのか?
たかが昆虫のために、ご近所さんとの関係を悪くするのか?
いや、しかし、たった今、ご近所さんが放した数匹のカブトムシのせいで、その何倍もの数のクワガタが棲息地を奪われてしまうかもしれない。
いや、でも、既に相当数のカブトムシが定着しているのだとしたら、数匹のカブトムシを殺すことに意味はあるのだろうか?
いや、しかし、小さなことでもやらないよりはマシなのか?
いやいや、本当に生命を尊重するなら、全てのカブトムシを引き取って、最後まで飼うべきではないか?
いや、さすがに、それは無理だろう・・・
とか、道徳の授業的なことを考え込んでしまった。
北海道と本州の間には、動植物相に大きな隔たりがある。*2
だから、津軽海峡を越えて動植物を移入することには注意を払わねばならない・・・っていうことは、意外と知られていないのだろうか。
飼育場から逃げ出した動物や、「可哀想だから・・・」と放された動物が、北海道の環境を脅かしている例はたくさんある。*3
アライグマ *4 、ウチダザリガニ *5 、オンネトー *6 の熱帯魚、そして、カブトムシ・・・。
私にとっては、カブトムシを放すのは、今さらブラックバスを湖に放しちゃうのと同じくらいのインパクトがあるのだが、どうも、世間ではそのようには思われていないらしい。
カマキリ先生 *7 に相談してみたらいいのだろうか・・・。*8
しかし、視点を変えれば、在来種を頑なに守ろうとする態度は、狭量な排外主義に過ぎないと言えるかもしれない。
いや、だからと言って、人間の身勝手な振る舞いで他の種に影響を与えてよいものか。
いや、しかし、人間も単なる生物の一種に過ぎないと考えれば、人間の行為も自然の一部と言えるのではないか・・・
とか、道徳の授業どころか、哲学になっちゃいそうなので、この辺にしておこう。
*1:「最後まできちんと飼おうね」(啓発リーフレット):外部リンク
*2:特に津軽海峡に引かれた動物相の分布境界線はブラキストン線と呼ばれている。(ブラキストン線 - Wikipedia:外部リンク)
*3:北海道の外来種リスト — 北海道ブルーリスト 2004 —:外部リンク
*4:アライグマ対策 | 環境生活部環境局生物多様性保全課:外部リンク
*5:ウチダザリガニのページ | 環境生活部環境局生物多様性保全課:外部リンク
*6:オンネトー - Wikipedia:外部リンク
*7:中の人は香川照之。(香川照之の昆虫すごいぜ! | NHK for School:外部リンク)
*8:ちなみに、カマキリも北海道では棲息域が一部地域に限られているのだが、それ以外の地域でもホームセンターなどでカマキリが売られているのを見かけるようになった。棲息していない地域はもちろんだが、元々棲息している地域だとしても種類が異なる可能性があるし、同種だとしても遺伝子汚染を引き起こす恐れがあるので、どの地域であろうと最後まで責任を持って飼うようにして欲しい。