NHKの「日本の話芸」で柳家さん喬の『天狗裁き』が放送された。
お気に入りの噺で、以前から何度も繰り返しCDで聴いていたのだけど、今回、映像として観ることができたので、とても嬉しい。*1
地方に住んでいると、簡単に寄席には行けないし、落語会なんかも滅多にない。
お気に入りの落語家を観られる機会は極めて少ないので、「日本の話芸」や「演芸図鑑」に登場することをいつも期待しているのだけど、そう簡単に順番は回ってこない。
ほとんど当たりが入っていないくじを毎週引いているような感覚だ。
その上、お気に入りの落語家が登場したとしても、聴きたい噺をやってくれるとは限らないので、大当たりを引ける確率は極めて低いのだ。
けれども、考えようによっては、お気に入りを待つのも落語の楽しみ方のひとつなのではないかと思う。
今でこそ独演会などで演目があらかじめ発表されるようになっているが、かつては寄席へ通って目当ての噺がかかるのを待つしかなかったはず。
聴きたい噺を選んで独演会に出かけるというのは、本来の楽しみ方とは違ったものになっていると考える落語家もいるようだ。
何がかかるか分からない状態が長く続くからこそ、好きな噺が聴けた時の喜びが増すというのが、寄席の楽しみ方のひとつなのかも知れない。
そう考えると、「日本の話芸」でお気に入りの落語家のお気に入りの噺が聴けるのを待つというのも、寄席の楽しみ方に類するものと言えるだろう。
必ず来るとは限らない花魁を待つのも遊びに含まれるという吉原のしきたりみたいなものだ。
・・・などと、粋を気取ってみたものの、次に柳家さん喬を「日本の話芸」で観られるのは、随分先になるのだろうなぁ、早く出て欲しいなぁ・・・と、思わずにはいられない。
『五人廻し』の野暮な客たちの心情ってこんな感じ? 違うか。