Amazonプライムで三遊亭小円馬の『花見酒』が無料になっていたので、聴いてみました。*1
【この記事の目次】
『花見酒』の経済
『花見酒』は、花見客に酒を売って儲けようと目論んだ2人が、売り物の酒を運んでいるうちに飲みたくなってしまい、金を払えばいいじゃないかと、一方がもう一方に金を払って飲むことを繰り返しているうちに・・・という噺です。
このお金のやり取りがおかしいことは直感的に分かるのですが、ちゃんと説明しようとすると『壺算』みたいに難しいんじゃないかなぁ。
ちょっと調べて何か書いてみようかな・・・と思って調べてみたら、出るわ出るわ、既に多くの方が色んなことを書いていました。
そんなに有名な噺だったの? でも、やっている人を見たことがないなぁ・・・と思ったら、やっぱり演じる人は少ないようです。
実はマイナーな落語なんですよ。落語家である私でも生で聞いたことが数回しかないくらい。
そんなマイナーな噺なのに、なんで多くの人が知っているのかというと、上で紹介した記事にもあるように、「経済」との関連で語られることが多いようです。
せっかくなので、調べたことをまとめてみました。
なお、あらすじについては、下記に引用する『花見酒』の記事に詳しいものがありますので、省略いたします。
笠信太郎の『“花見酒”の経済』
この噺を有名にしたのは、笠信太郎の『“花見酒”の経済』という本のようです。*2
これについて熊本学園大学の笹山茂さんが、次のようにまとめています。
花見酒経済とは,身内で売買を繰り返すことで,見かけ上,売上が伸びたように見えるが,実質は変わらず,場合によっては借金だけが残るような取引が行われている経済.時には,粉飾取引など明らかな違法行為を含む場合もある.(https://www2.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/macroecon/mailmagahanami.html)
石橋湛山の「花見酒の経済」
これに対して、異なる見方もあるようです。
『ネオアベノミクスの論点』という新書で、石橋湛山の「花見酒の経済」が紹介されているようです。*3
石橋の主張と同じ主旨と思われることが、下記の記事にうまくまとめられています。
酒を飲んでしまって、お金が増えなかった2人ですが、「酒を飲んでいい気分になった」という「効用」を手に入れており、「経済は実質的に成長している」という見方もできるんですね。
「効用」を得るのが花見客である必要はなく、自分達で消費したとしても、GDPとしては同じであるという主張です。
つまり、「お金が回る」ことが大事だということですね。
それを言っちゃぁ・・・
上記の2つの見方があることを踏まえた上で、「そもそも」という感じで身も蓋もないことを書いている方もいました。
酒を仕入れた二人は共同経営者で、酒の売上金は共同管理すべきところを双方が怠って使ってしまったわけだから、利潤を云々(うんぬん)するには根本的に欠陥がある噺なのである。
それはそうかも知れませんが、それを言っちゃぁ・・・という感じじゃないでしょうか。
まとめ
- 身内の間で売買を繰り返しているだけでは、実体経済が伴わず、バブル経済に喩えられる。
- たとえ身内の間でも、お金は回っているのだから、その分経済は成長しているとする見方もある。
- っていうか、売上金に手を付けてしまってるんだから、そもそも経営者として欠陥があるんじゃね? という見方もある。
以上、引用ばかりでオリジナリティのまったくない記事になってしまいましたが、何かのご参考になれば幸いです。