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しろのブログ

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『猫の皿』の贅沢さ

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いきなりですけど、『猫の皿』の皿の使い方って、とても贅沢だと思いません?

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「江戸へ持って行けば、黙って三百両、うまくすれば五百両、千両」というほどの高級な名品ですよ。*1

それを猫の餌皿に使うなんて・・・って思ってしまうんですよね。

 

とか言いながら、我が家では柳宗理のボウルを犬の水飲み用のボウルに使ってしまっていますけど。

だって、大きすぎて使い勝手が悪かったんですもん。

結婚式の引き出物として頂いたカタログギフトからボウルセットを選んだはいいけど、1番大きい奴は非力な妻の手には余る大きさで、ずっとしまい込んであったのですが、ある時、気付いてしまったんですよね。

うちの犬は水の飲み方が下手で、水を飲む度にビチャビチャしぶきを飛ばすものですから、頻繁に床を拭く必要があったのですが、大きいボウルにすれば、床まではしぶきが飛ばないのではないかと。

で、やってみたら、もくろみ通りに上手くいったので、それ以来、そのまま使い続けているんです。

まあ、300両なんていうほどの値打ちはありませんけどね。

 

という話はさておき、高級品を手に入れたら、普通はどうするでしょう。

うちにはそれほどの高級品がないので、想像するしかないのですが、手に入れることさえ困難な高級品を手に入れたら、大事に仕舞い込んでおいて、いざという時に使いましょう・・・と思いながら、結局ほとんど使わないままになってしまうかもしれません。

昔、国語の教科書に載っていた『おじさんのかさ』を思い出します。*2

あるいは、どこかに飾っておいて、来訪者に見せびらかそうとするでしょうか。

 

ブランド品を「普段使い」にできる人って、そういう高級品を当たり前のように持っているようなセレブな人たちですよね。

でも、茶店の主人は「絵高麗の梅鉢」とかいう高級品を「普段使い」どころか「猫の皿」として使っています。

商売が傾き、かつて集めていた他の高級な品々を手放しながら、どうしても手放す気にはなれなかったという逸品を、仕舞っておくでもなく、飾っておくでもなく、自分用に使うのでもなく、猫の餌皿として使うなんて。

しかも、その価値を知っていることをおくびにも出さず、口八丁の道具屋にまったく気取られもしないとは。

 

天然の馬鹿なのか、よほど肝の据わった豪胆な人物なのか。

そう考えると、茶店の主人は、道具屋と騙し合いをするような策士というよりは、つかみ所のないミステリアスな人物のようにも思えてきます。

『猫の皿』は、落ちが分かれば終わりというような単純な噺ではないのかもしれません。

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