柳家さん喬の『ねずみ』を聴いていたら、「子丑寅卯・・・」という十二支が出てくることに気付いたという話。
「鼠屋」は「子」、「虎屋」は「寅」なのは当然なんだけど、柳家さん喬は他にも縁語のように十二支を忍ばせている。それに気付いたきっかけは、またもや夫のシャドーイング。*1
左甚五郎が鼠屋の主人から川で足を洗うように言われた際にぼそっと呟く言葉。聴き取りの得意な夫が珍しくなかなか聴き取れない。
コンテクストを捉えることが得意な夫は、逆に自分が捉えたコンテクストに頼りすぎる傾向があり、そこから少しでも外れていると、言葉の認識率が極端に低下するようだ。未完成のAIみたい。
困った夫が妻に相談し、一緒に聴いてみると、妻は容易に聴き取ることができた。「牛だね まるで」じゃない?って言った瞬間に夫が「あっ!」と気付いた。十二支じゃないか!?
そういえば、「片方でぴょんぴょんと・・・」に「兎だね」と返す台詞にも何となく違和感を持っていたんだけど、これでつながった!
鼠屋に虎屋、卯兵衛に丑蔵、「牛だねまるで」に「兎だねまるで」。「子丑寅卯」が揃っている。
さらに、卯兵衛の幼馴染みは「生駒屋」で、「駒」はもちろん馬のこと、つまり「午」。「寅」から「卯辰巳」を飛ばして「午」だから「2〜3軒先」になっているんじゃないか?
さらにさらに、虎屋を乗っ取ったのは丑蔵だから、「丑寅」で不吉な暗示になっているじゃないか!粋な遊びを入れているなぁ。
他の人はどうしているのかと気になって、録画してあった「日本の話芸」から春風亭小柳枝のを見直してみたら、「兎だね」は入っているけど「牛だね」は無かった。代わりに後半の方でさり気なく「馬」を入れている。
これから『ねずみ』を聴くときは、その点にも注意を払って聴いていきたい。
このような言葉遊びの存在を知ったことで、夫の音声認識能力もアップデートされたことだろう。今後、その能力が他の噺にも活かされることを期待したい。
追記
柳家さん喬の「ねずみ」は「えほん寄席」のもすごく良くて、十分に楽しめることを紹介しておきたい。