『落語こてんコテン』は、柳家喬太郎師匠が古典落語50席を選び、ストーリーとその噺に対する思いを綴ったエッセイ集です。口語体ということもあってか、するすると読め、ほどよく適当な感じが喬太郎師匠の落語にも通じていて、楽しい本です。
その中から2席ほど好きな噺を。
まずは、「町内の若い衆」。初めて聴いたのは、テレビの「演芸図鑑」での柳家権太楼師匠です。聴いたときには、さらっと聴いたのですが、喬太郎師匠も本書の中で触れておられますが、文字にするとサゲがなんだかすごい・・・。「うちの人の働きじゃないんだよ、町内の若い衆が寄ってたかって拵えてくれたのさ」実際には、お腹の子のお父ちゃんは、お父ちゃんであって、町内の若い衆ではないのだけれど(町内の若い衆だったら衝撃的です)。
トーンと軽いネタで、頭カラッポにできますよ、と喬太郎師匠もおっしゃっています。ほんと寄席でぼーっと聴きたいです。
「夢の酒」は「日本の話芸」で柳家さん喬師匠がなさっていたので、録画して何度も聴いています。喬太郎師匠が本書の中で「堅物ってほどではないんだろうけど、たぶん普段は真面目で下戸の若旦那、無邪気にやきもちを焼くお花、呆れつつも嫁の言う事を聞いてやり、夢の中に入ったら入ったで好きな酒に心を奪われてしまう大旦那・・・登場人物がみんな可愛いですよね」と。「夢の中のご婦人も、イヤらしくない、わりあい無邪気な人じゃないか」と喬太郎師匠は分析しています。さん喬師匠が演じるからイヤな感じがしないのかもしれませんが、確かに向島のご婦人、めぎつねではないかな。
「夢の酒」の中で一番好きなキャラクターは、大旦那です。私の想像する大旦那は、包容力があり、穏やかで、ものすごーく優しい大旦那なのです。お花ちゃんが、どんなに我がわがままを言っても受け止めてくれる。さん喬師匠の演じる大旦那が、ぴたりとはまります。そして、何度も聴くうちに、私が思い描く大旦那は、さん喬師匠そのものになってしまったのでした。