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大八車って危ないの?(『鴻池の犬』を聴いて)

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『鴻池の犬』に「犬が大八車に轢かれてしまう」という悲しい場面が登場します。*1

ja.wikipedia.org

大八車ってなんかのんびりした印象なので、犬が轢かれるなんていうことがあるのかなぁ・・・というわけで、少し調べてみました。

大八車って危ないの?(『鴻池の犬』を聴いて)

とりあえず「コトバンク」で調べてみると、「日本大百科全書(ニッポニカ)の解説」に次のような記述がありました。

大八車による事故多発のため殺傷の場合は流罪であるという法令が出ている。

kotobank.jp

意外にも「事故多発」だったんですね。

では、どんな事故が多かったのか、さらに調べました。

交通事故の罰則

www.homes.co.jp

上記のサイトによると、江戸の町の人口密度は東京を遥かに上回るほどの過密都市だったこともあり、事故が頻発していたらしく、第8代将軍の吉宗が「公事方御定書」で以下のように定めたそうです。

大八車で人を引っかけて死亡させた車力は死罪、その荷主は重き過料、家主は過料

ただ、実際の運用は柔軟だったようで、ただちに「死罪」というわけではなかったようです。

例えば人通りの多い時間帯に車を勢いよく引き回した結果、人を死に至らしめた場合は有意犯の「巧」として死罪、ゆっくりと車を引いていたにもかかわらず突風にあおられ、荷崩れを起こし人を死なせてしまった場合は無意犯の「不念」として、罪一等が減じられ、つまり一段階減刑されて遠島になった

事故の原因

罰則を強化しなければならないほどに事故が多かったことは分かりました。

でも、大してスピードが出そうにない大八車に人が轢かれるなんていうことがそんなにあったというのがいまいちピンと来ません。

もう少し調べてみると、下記のサイトが見つかりました。

実は、大八車による事故は坂道で起こることが多かったのです

www.edojidai.info

ようやく合点がいきました。

大八車にはブレーキが付いていなかったようですから、重い荷物を載せて坂道を通行していれば、コントロールが利かなくなることもあったでしょう。

勢いが付いた大八車に接触したら、相当な衝撃を受けたに違いありません。

犬を轢いた罪は?

江戸時代に犬というと「生類憐れみの令」が思い浮かびますね。

大八車で犬や猫を轢かないように注意することを命じる通達も出されていたようなので、その時代であれば重罪となっていた可能性があります。

実際に、猫を轢いた罪で牢屋に入れられた例があるようです。*2

しかし、5代綱吉の死後、犬や猫に関する規制は順次廃止されていき、8代吉宗の時代には「将軍の御成の際に犬や猫をつなぐ必要はないという法令」も廃止されたようです。*3

『鴻池の犬』の犬の扱い方からすると、綱吉の時代とは思えないので、犬を轢いたとしても重い罪に問われることはなさそうです。

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