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『千両みかん』の番頭の「その後」を想像してみる

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北海道はそれほど暑くはないのだけど、「暑い」というニュースをよく見るので、『千両みかん』について書いてみよう。

※ あらすじを確認したい方は ここをクリック してください。

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【この記事の目次】

『千両みかん』の番頭の「その後」を想像してみる

落語のオチの「その後」について語るなんて、無粋だとは思うのだけど、まあ固いことは言わずに、ね。

というわけで、番頭の行く末を好き勝手に何パターンか想像してみたい。

換金できた場合

大きな分岐点は、みかん3袋を換金できるかどうかだろう。

普通は換金できないと考えるだろうが、あえて考えてみよう。可能性は限りなくゼロに近いだろうが、ゼロとは言い切れない・・・かも知れない。

たまたまの連続で・・・

たまたま若旦那と同じくらいみかんに恋い焦がれている人が存在し、たまたま番頭がその人に出会い、たまたまその人が三百両を持っていたとしたら、三百両で買い取って貰えるかも知れない。その場所はみかんの問屋かも知れないし、途方に暮れた番頭がたたずむ橋の上かも知れない。

泡銭の使い途

もしも、奇跡的に換金できたとして、番頭はその後どうなるだろうか。

三百両を元手に何か商売を始めるだろうか。それはどのような商売だろうか。

商売を始めるなら・・・

最も可能性が高いのは、個人がそれぞれの価値観で値を付ける「私的価値」と「市場価格」との差、あるいは、ある人にとっての「私的価値」と、別な人にとっての「私的価値」との差を利用する商売ではないだろうか。*1

例えば、古道具屋。ある人にとって不要になった物品を出来る限り安く買い、それを必要とする人に出来る限り高く得る。その差額を利ざやとして稼ぐ商売だ。

しかし、みかん3袋の買い手の当てがあるわけでもないのに飛び出してしまった番頭が、上手く利ざやを稼ぎ続けるほどの目利きができるとは考えにくい。

もっと手っ取り早く・・・

あるいは、もっと手っ取り早く稼げそうなものに手を出すだろうか。例えば、富くじや丁半博打など。

しかし、あらゆるギャンブルは、統計的には負けることが明らかなので、あっという間に擦ってしまう可能性が高い。たとえ一時的に勝ったとしても、欲をかいて最終的には全額擦ってしまうかも知れないし、勝って得たお金も、あっという間に散財してしまうに違いない。

いずれにしろ・・・

いずれにしろ、「悪銭身につかず」を思い知ることになるだろう。

番頭にとっては、換金できた方が、悲しい末路が待っていると思う。

換金できなかった場合

では、換金できなかった場合はどうなるか、想像してみよう。

一番ありそうなのは「御薦」だろうけど、それではあんまりなので、他の可能性を探ってみよう。

謝罪して店に戻る

御薦以外では、これが最も可能性が高いと思う。

番頭は、真夏にみかんを手に入れることが極めて難しいということに考えが至らず、「私が手に入れてきましょう」と安請け合いしてしまうような、そそっかしい性格の持ち主だ。

大旦那は、そのような粗忽者であることを承知の上で番頭まで引き上げてくれたのであるから、誠心誠意謝罪すれば、許してくれる可能性が高い。番頭から降格する可能性はあるだろうが、生活は安定するわけで、これが一番無難な選択肢だろう。

また、使用人達への賃金や、暖簾分けをする者への退職金を低く抑えていながら、たかがみかん1個に千両も出してしまうという贅沢さを番頭に見せつけてしまったという落ち度が大旦那にはあると言え、そのことに大旦那が気付いてくれれば、お咎め無しで復帰できる可能性もある。

虚しさを感じ、隠遁する

みかん1個に千両も出せる資本家と、労働者である自分との格差を見せつけられてしまった番頭。

苦労の末に手に入れた、千両もの値打ちがあったみかんの残り3袋が、三百両どころか、ほとんど価値を失ってしまったことを知れば、貨幣経済そのものに嫌気が差してしまうかも知れない。

途方に暮れた番頭は、どこかの橋で掌の上のみかんをしばらくの間、じっと見つめ、川へ投げ捨てるだろう。

そして、人里離れた山奥へ引っ込み、自給自足的な生活を送ることになる。

夏の暑い日には、「捨てるぐらいなら、食っときゃ良かったなぁ」と独り言を呟きながら・・・。

というのはどうだろうか。

蛇足

物語のエピローグとして付け加えるなら、最後のシナリオが一番気に入っているのだけど、どれを選んだとしても、蛇足にしかならないだろうな。

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千両みかん

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