以前、4月1日に放送開始した「なつぞら」*1 にかこつけて、ちょっとした記事 *2 を書いた。
その時点で既に北海道弁について書いた記事 *3 があったので、新たに1つの記事にするつもりはなかったのだけど、「なつぞら」も含めて、ドラマで出てくる北海道弁についてまとめ直してみた。
【この記事の目次】
北海道を舞台にしたドラマで使用される北海道弁に関する改善案
「大目に見るべき」という意見もあるだろうけれど
「ネイティブじゃないんだから、多少は大目に見るべき」という意見があるだろうことは承知しているんだけど、あまりにも気になって物語に集中できないので、その原因と改善案について考えてみた。*4
違和感の原因
原因については、過去の記事の繰り返しになるが、簡単にまとめると、我々道民にとって最も違和感が大きくなるケースは、「北海道弁の語彙が、標準語の(あるいは誤った)イントネーションで発音されている」場合だと思う。*5
語彙よりもイントネーション
「なつぞら」でも「なして」や「〜だべさ」など、代表的な北海道弁の語彙が使われているのだけれど、実は北海道弁らしさを左右するのは、語彙そのものよりもイントネーションの方だ。
特に慣れ親しんだ北海道弁の語彙が、異なるイントネーションで発音されると、反射的に違和感を覚えてしまうため、北海道弁の語彙が増えるほど、違和感の元も増えてしまう。*6
北海道弁らしくするポイント
逆に、北海道弁の語彙がひとつも使用されていないとしても、イントネーションが北海道弁であれば、途端に全体が北海道弁に聞こえてくる。
どうにかしてイントネーションを例示できないかと考え、試しに「なして」をチューニングメーターで計測してみたところ、夫の発音では、「な」から「して」にかけて、約1オクターブ下がっていることが分かった。(ただし、北海道弁には地域差があり、文脈によってイントネーションが変わる可能性もあるので、あくまでも1例であるということに留意)。道外の人が「なして」を発音すると、逆に上げてしまうことが多いように思う。
特に大事なポイント
一般的に、イントネーションを逆にすると訛りを表現しやすいのだろうと思うけど、実際の北海道弁は標準語と上げ下げの向きが一致していることも多く、その場合、標準語と比べて北海道弁は音域の幅がかなり広いのではないだろうか。
また、北海道弁らしい印象を左右する要素は、特に文末のイントネーションであり、そこに気を付けるだけでも北海道弁らしさは十分に表現できる。*7
さらに違和感を減らすために
北海道弁は、標準語と共通の語彙であっても、異なるアクセントで発音される単語が多いのだが、最近は、テレビなどから流れてくる標準語の音に慣れているので、標準的な語彙が標準的に発音された場合は、違和感を覚えにくい。だから、へたに北海道弁の語彙を用いて、違和感の元を増やすくらいなら、ある程度は違和感が生じにくい標準語を用いた方が良いと思う。
改善案
そこで、俳優の負担を減らし、かつ、北海道弁らしくするための方策として、以下の3点を提案したい。
- 文末の表現を中心にしてイントネーションの習得に集中し、
- イントネーションを習得できていない北海道弁の語彙は無理に使用せず、
- 標準語と共通の語彙には標準語のイントネーションを用いる。
これで、違和感を減少させると同時に、北海道弁らしさも表現できると思う。*8
やってみたらいいんでないかい?
追記
この記事を書いた翌日、調剤薬局で薬を待っている間、備え付けのテレビで第4話の再放送が流れていた。音声がほとんど聞こえなかったので字幕を読んでいたら、自然に涙がこぼれてきた。北海道弁が気にならなければ、きっともっと楽しめるんだろうなぁ。
ブログ内検索
*1:連続テレビ小説「なつぞら」|NHKオンライン(外部リンク)
*2:4月1日の過去記事(内部リンク):これから読んでくださる方、先に誤っておきます。ごめんなさい。
*3:北海道弁について書いた過去記事(内部リンク)
*4:既にかなり先まで撮り終えているだろうし、関係者がこんなマイナーなブログを発見するとは思えないのだけど、ひょっとしたら何かの拍子に誰かの目に留まって、何かのドラマに活かしてもらえるかもしれないという淡い期待を抱いて書いている。
*5:「標準語」という言い方には異論があるだろうが、一般的に使用されている用語なので、分かりやすさを優先して使用する。
*6:本当に反射的な感覚なので、意識で抑え込むことが難しい。
*7:しかしながら、その文末の発音を真似るのが難しい。特に最後の音節の独特な発音を完璧に再現するのは難しいので、ノンネイティブにそこまでは求めないけど、イントネーションだけでも真似てくれれば、違和感はぐっと減るはずだ。