落語-落語分析
『三枚起請』には3人の男が登場する。 その3人のうち、最後に登場する男、Wikipedia では「C *1 」とされている人物に焦点を当てて、柳家さん喬の『三枚起請 *2 』を聴いてみたい。 ※ 『三枚起請』のあらすじを確認したい方は ここをクリック してくださ…
Wikipedia では、『三枚起請』に登場する男3人を抽象化して「A」「B」「C」と表している *1 。東西や演者によって、名前に違いがあるためだ。 しかし、実際に噺を聴く際には、当然ではあるが、もう少し具体性を帯びた人物像を思い浮かべた方が楽しめるだ…
『三枚起請』は、その基本的な筋が共通していても、登場する人物名が東西や演者によって違いがあるらしく、Wikipedia では、登場する3人の男性をそれぞれ「A」「B」「C」としている。*1 この3人が、自分達を手玉に取った遊女を懲らしめようと計画するの…
上手い落語家が演じる落語は、予備知識が無くても充分に面白いのだけど、一般教養レベルのほんのちょっとした知識があれば、より面白く聴けると思う。 例えば柳家さん喬の『棒鱈 *1 』は、何も知らずに聴いても楽しめるぐらい上手いのだけど、時代設定ぐらい…
『棒鱈』の筋はとても単純だ。100字程度に要約すると こんな感じ だが、要するに「酔っぱらった町人が侍に絡む」というだけの話だ。 こんな噺がなぜ面白いのだろう。 柳家さん喬の口演に基づいて、考えてみたい。*1 【この記事の目次】 『棒鱈』の面白さ…
「この後、衝撃の展開が!」という面白さを否定するつもりは全くないのだけど、それだけでは繰り返し鑑賞したくなるような名作にはならないと思う。 先の展開が予想通りだとしても、そこに至る過程を楽しめるものでなければ、簡単に消費されるものにしかなら…
柳家さん喬の『天狗裁き』を聴いてから、こんな単純な噺がなぜ面白いのかを考えているのだけど、今回はさん喬の上手さについてではなくて、噺そのものについて考えたことを発表してみようと思う。 ※ なお、基本的に柳家さん喬の口演に準じています。細かい部…
北海道はそれほど暑くはないのだけど、「暑い」というニュースをよく見るので、『千両みかん』について書いてみよう。 ※ あらすじを確認したい方は ここをクリック してください。 【この記事の目次】 『千両みかん』の番頭の「その後」を想像してみる 換金…
『百川』についていくつか記事を書いているうちに、その登場人物である百兵衛を中心に据えて書きたくなった。 百兵衛は、河岸の若い衆が言うように抜けているのだろうか。抜けているとしたら、どれくらい抜けているのだろうか。 ※『百川』のあらすじを確認し…
当研究会では、柳家さん喬の『百川』*1 の人気が非常に高く、常にヘビーローテーション状態にあるため、普通なら気にならないような些細なことまで気になってしまうのかも知れない。 今回は、1年ほど前に柳家さん喬が「日本の話芸」で演じた『百川』*2 で気…
先週、季節外れを承知で『百川』の記事を書いたのだが、*1 そのせいで書きたい気持ちを抑えきれなくなってしまったので、再び『百川』について書いてしまおう。 ※『百川』のあらすじは ここをクリック(ネタバレ注意)してください。 『百川』における柳家さ…
三社祭の噺は季節外れだとは思うのだが、夏祭りの季節ということでご容赦いただきたい。 ということで、『百川』について以前から気になっていることを書こうと思う。 以前、「超入門!落語 THE MOVIE」について触れたときに、既に少しだけ書いたことなのだ…
7月も半ばだというのに北海道はまだまだ寒くて、暖房を使っていたりするのだけど、そんな北国にも暑い夏が来てくれることを願いながら、柳家さん喬の『千両みかん』を聴いてみた。 ※ あらすじを確認したい方は ここをクリック してください。 【この記事の目…
『夢の酒』は、いわずとしれた「黒門町の師匠」桂文楽の十八番。文楽が作り上げた噺といってもいい、自家薬籠中のネタだった。 『柳家さん喬15夢の酒/妾馬 *1 』の「解題」で、長井好弘はこのように述べ、さらに、柳家さん喬の言葉として、以下のように紹介…
所用で飛行機に乗ったので、機内放送の「JAL名人会」を聴いていたら、三遊亭金遊の「錦の袈裟」がかかっていた。 この噺、今回初めて聴いて、その下品さに驚いた・・・のだけど、もう一度聴いてみたら、下品なイメージを抱いていた箇所が、直接的には下品な…
いわゆる「いい女」の容姿をどのように描写すべきか。あるいは、そもそも描写しない方が良いのか。それは、表現者の目的によって異なるだろう。 『夢の酒』においてご新造さんの容姿を詳細に描写する必要性について 受け手にとっての「いい女」をイメージさ…
前回、ちょっとした気まぐれで「次回予告」なんて書いてしまったものだから、 このタイトルで書かなければならなくなってしまった。 書きたいと思っていたことのはずなのに、いざ書き始めようとすると、義務感のようなものが邪魔をして、書くのが億劫になっ…
『寝床』の記事をずいぶん書いた気がするので、そろそろ他の噺について書こうかと思う。寝床で見るのは夢ってことで、『夢の酒』について書いてみよう。 なお、例によって、基本的に柳家さん喬の口演に準拠していることを申し添えておく。*1 【この記事の目…
忌み言葉というものがある。結婚式で「終わり」 を「お開き」と言い換えたりする類の言葉だ。「寝床」を聴き比べているうちに、少し思うところがあったので、書いてみようと思う。 ちなみに、今回の記事は、これまでの落語に関する記事と違って、少しですが…
当代随一の名人である柳家さん喬が抱える「問題」とは何事かと思われた方もいらっしゃるだろう。人目を引くためにセンセーショナルな表現にしたが、ファンに怒られる前に種明かしをしておこう。ここで言う「問題」とは、柳家さん喬は「上手すぎる」というこ…
「寝床」の旦那は妻が臨月だという小間物屋を疑っているかどうか問題 このページにたどり着いた方のほとんどには不要だと思うけど、もしかしたら「『寝床』を聴いたことがないけど、この記事を読んでみたい」という方がいらっしゃるかもしれないので、「寝床…
少し気分が落ち込んでいるとき、どんな落語を聴くのが良いだろうか。 あえて人情噺を聴いて涙を流し、カタルシスを得るという手段もあるが、人情噺をしっかり聴くには、ある程度の集中力が残っていなければならないので、落ち込みが激しいときには、涙を流す…
NHKの「日本の話芸 *1 」で柳亭市馬の『掛け取り』を観て、すっかり「三橋の旦那」に魅了されてしまったわけだが *2 、それ以前に「超入門!落語 THE MOVIE」で観たときには、正直言って「期待外れ」だと感じていた。 ※ 『掛け取り(掛取万歳)』のあらす…
柳亭市馬の『掛け取り』(NHK「日本の話芸」を観て) NHK「日本の話芸」で柳亭市馬 *1 の『掛け取り』を観た。 感想をひと言で言うと、「ライブで観ていたお客さんがうらやましい!」。観客も噺の中に入り込んでしまって、完全に一体化してしまってい…
「町内の若い衆」における2つの解釈 当研究会は、夫婦2人で落語の研究をしているわけだが、どんな落語が好きかという落語観については、意見が割れることはほとんどない。しかし、物語の解釈については異なる見解を持つ場合がある。「町内の若い衆」がそれ…
これまでに聴いた「ねずみ」を振り返ってみると、登場する鼠屋の倅(以下、卯之吉)の演じ方に、落語家によって違いがあると感じ、その点について、分析してみた。 卯之吉の演じ方、3類型 冒頭、宿外れで卯之吉が左甚五郎に鼠屋までの道程を案内する場面に…
複数の「ねずみ」を聴いているうちに、大きく2つの系統に分けられることに気付いた。我々はこれを「番頭と女中頭が元々男女の仲だったとするかどうか問題」と名付け、議論してみた。 この違いは、物語全体の印象を左右するほどの違いだと思うのだが、良し悪…
これまでに4〜5人ほどの「ねずみ」を聴いた。今回は柳家さん喬のCDを中心に、他の落語家によるものと比較しながら、我々がどんな「ねずみ」を好むのかを考察してみた。 今回の主な論点は2つ。子どもの描き方と左甚五郎の描き方の2点だ。 まずは、子ども…
柳家さん喬の『ねずみ』を聴いていたら、「子丑寅卯・・・」という十二支が出てくることに気付いたという話。 「鼠屋」は「子」、「虎屋」は「寅」なのは当然なんだけど、柳家さん喬は他にも縁語のように十二支を忍ばせている。それに気付いたきっかけは、ま…
NHKのラジオ番組「すっぴん! *1 」を時々聴くのだけど、中でもお気に入りなのが「ユカイな江戸暮らし *2 」というコーナー。山田順子さん *3 のお話が落語の楽しみ方をより広げてくれる。 例えば、花魁と遊ぶには多大な費用がかかったという話。太鼓持ち…